校長のつぶやき(103)いただきましたご質問(海外進学・留学)について


掲載日:2024.10.18

先週の土曜日(10/12)に開催しました中学入試向けのオープンキャンパスでいただきましたご質問に、この『校長のつぶやき』でお答えさせていただきます。

ご質問は2つ。
(その1)
海外進学を考える場合、学習、手続き、入学までのサポートはありますか? 在学中に留学はさせた方がいいですか?
(その2)
高校卒業後、直接海外の大学へ進学するのと、国内の大学に進学してその大学の留学制度を使って留学するのと…どちらにさせるか悩んでいます。アドバイスはありますか?

お答えさせていただきます。

質問その1:海外進学を考える場合、学習、手続き、入学までのサポートはありますか? 在学中に留学はさせた方がいいですか?

◆お答えの前に…海外進学の目的と意識の明確化
まず、なぜ進学が国内ではないのか。国外の必然性はあるのか。海外進学の夢や目的を明確にすることが重要です。人生の進路として大学卒業後の先に何を見ているか・・・という話になります。留学先の大学を卒業して「どこで」「どんな生き方」をしたいのかを考えておくことが重要です。その上で進学する先(国、大学)を考えることになるでしょう。現在はアウトバウンドの留学生に対して日本の国内企業の求人を紹介するフォーラム(「ボスキャリ」などが有名)などが大々的に開かれることもあって留学進学のメリットがよく見えますが、まずは留学する目的を極力明瞭にして、地域、大学を絞ることが大事です。それによって支援のあり方も違います。
一つ、大きな注意は「留学の目的が英語の習得」というレベルでの海外進学です。英語力のアップが目的での留学には挫折や退学が少なくありません。その意識なら止めるべきでしょう。

◆海外大学選択のメリットを活かす英語力
昨今は日本の大学でも中途退学者が少なくありません。入学した学部学科が合わなかったという理由が多いのが現実です。しかし大学の選択の際、理系以外は専攻を考えるのは簡単ではないのが現実です。海外の大学へ進学を考える場合はさらに難しいでしょう。しかし、海外進学の場合、今の多くの日本の大学とは違って、低学年時に様々な学術分野に繋がるリベラルアーツを学びながら専攻分野を考える(選ぶ)猶予があります。
ですから、何よりも準備する英語力です。自分を支えるのは強い希望だけではなく、着実な英語力です。高3夏までに英語試験IELTS 6.5以上(最低でも6.0)を目指し、英語にあまり困らないレベルで進学することが大事です。英語力があれば明確に専攻したい分野を決めていなくてもリベラルアーツを学びながらじっくりと進路や専攻分野を定められる、と言ってもいいでしょう。小職が関わってきたこれまでの10年間、海外進学をした生徒には、将来への強い決意と高い英語力があり、国際社会を伸び伸びと眺めながら大学の学びの中で専攻を決め、そして人生を拓いていったということが共通しています。人生を考えるのは国内大学も同じです。違いは、高校までに付ける英語力です。

◆本校在学中の短期・長期海外留学も一助にはなりますが…
本校の特色となっている短期・長期の海外留学ですが、実は、どの生徒にも有意な経験として、国内・国外を問わず大学への進学に必要な野心的な学びの態度と主体性の育成に役立っていると言えます。
在学中の留学では誰もが、「主体性」、「主体的行動」での未成熟を知らされます。「主体性」に関しては、日本では考えられないほど断絶的に差異のある教育環境の中で痛感して経験してきます。本校が海外留学プログラムを推進するのはこの点です。未知で非日常の経験からの「主体的な自己」への成長が狙いです。実際に留学した生徒全員が主体性の重要性の気づきを述べます。帰国報告でのレポートや面接では例外なく、主体性の成長が異口同音で感動をもって語られます。中高在学中の短期・長期海外留学は、むしろ逆説的に、国内大学への進学支援に役立っています。
海外進学を考えるとき、もう一つの意味があります。実際に異文化の中での生活を経験して自分の適性を判断できることです。非日常での自分の行動意欲について自己理解を深める。日本の学校とは違う学習の方法を経験する。海外進学の適性を考える上での一助になります。しかし、もともと強い進学留学の意欲があるのなら、在学中の留学が必ず必要とは思いません。また、海外大学進学に耐えられる英語力の習得はおおよそ期待できません。ただし、英語を聴く力を自然に身に付けるという優位性はあります。しかし、進学留学の英語には別の手立てが必要です。

◆英語力のアップ・・・DDP
本校は、英語教育の内容と方法は、正直に申し上げて中学(高校)入学時の学力とは別軸で考えます。英語は「教科」ではありません。言葉です。必要な何かをするための「生きる力」です。英語はある程度まで、つまり大学入学に求められる英語力程度までは、学力とは関係なく習得できます。伸ばせる技能です。その観点から本校は中学からCLILという方法(横浜市内では先駆的導入校です)で学びます。CLILで恐れずに英語を聴く、話す、そして難しいものを力づくで読んでいく…そういう学び方で進めます。そしてその先に、留学進学を目指す生徒のためにDDPを設置しています。本気で大学進学での留学を考えるなら、高校卒業後からの準備ではなく、中高で始めるDDPです。学校カリキュラムの外に置く2年間のDDPは中3から参加可能です。DDPについては、『校長のつぶやき(62)「アメリカの高校卒業認定が同時にされるDDPの設置(掲載日:2021.10.02)」』を参照していただきたいと思います。
2年間のDDPはとても合理的です。海外の大学での学びに必要な英語力と大学での学び方を集中的に訓練します。具体的には、読み方・リサーチの方法、アカデミック・ライティング、レポートの書き方などのknow-howの習得と訓練に力点が置かれています。英語(圏)がnativeではない生徒を対象とする指導が行われます。集約的な資料で集中的な訓練を継続し、高い効果を上げます。DDPを設置した理由は費用対効果からです。DDPは高校段階での英語圏への1年間の留学と比較して安価で、中高在学中での集中的英語訓練ですから時間的なメリットもあります。

◆英語以外での学びでのサポート
海外大学の入試は基本的には「総合型選抜」のような入試です。ですから日常の教科学習では基本的なアカデミック・スキル(教科の基礎力・基礎知識)を身に付けながら、探究型の学びを個別に深めていくことが重要です。
特に、高校からのGLEコースは主として文系指向でその学び方を多く展開しています。GLEでは、他校ではほとんど行われていない留学に必須のIELTS対策の特別の英語授業が組み込まれています。しかしそれだけではなく、設定科目の「アカデミック・ラボ」などで、教科横断でのPBL型の探究学習を深く進めます。リサーチやレポート、プレゼンする力を日本語でも英語でも高めていきます。そうした学習が日常的な留学準備学習として機能しています。(この学び方は、国内入試では慶應SFC、立命館英語副専攻、立命館APUなど、英語力を重視しながらアカデミックなライティング力を重視する大学入試にも対応する学び方です)

◆海外大学の入学までの手続きなど
国内大学への進学の場合、予備校に通って学習と受験のための進路指導を受ける生徒も少なくありませんが、同様に考えていただくと良いでしょう。入学までの手続きや渡航先での保険を含めて生活のスタートまでは、大半のご家庭は専門のエージェントのサポートに依っています。リーズナブルな本校との提携先もあります。ただ、本校にも海外進学について全般的に助言できる教員がいますので、早めの相談が良いでしょう。

質問その2:高校卒業後、直接海外の大学へ進学するのと、国内の大学に進学してその大学の留学制度を使って留学するのと…どちらにさせるか悩んでいます。アドバイスはありますか?

◆直接海外へ「進学留学」する場合
端的に述べ、就職の際の国際化が大きく期待できます。もちろん、大学卒業後の就職に関しては進学する地域(国)にもよります。質問(その1)でもお答えしましたが、大雑把でも留学先の大学を卒業してどんな生き方をしたいのかを考えておくことが重要です。働く場所やしたい仕事を国際性で考えるとき、直接海外での仕事に就くのかどうかも含めて、国内の大学と天秤にかけて判断する。海外進学が優位に働くと見た場合はそれを考えてみる、ということに尽きます。
そもそも六浦中・高が海外進学を打ち出しているのは、海外の大学に進学し、大学時代から国際性を獲得することがそれほど特別ではない時代が既に到来していると考えるからです。日本特有の学問分野か、日本が先行する分野か、または国内の就職を考えての特別な優位性か・・・などであれば国内です。ただ、卒業する10年先のグローバル化社会への対応では、国内外の大学を並べて考えることもあっていいでしょう。どう理解されるかで留学進学の意義や価値は変わります。ご家庭の考え方次第ですが、両方の追求ができる環境を六浦中・高は整えたいと考えています。

◆国内の大学に在学中での「期間留学」
日本の大学に入学して在学中にする「留学」を、海外大学へ直接進学でする「留学」と同レベルにとらえて留学を考えているとしたら、それは明らかに違うものです。
「海外大学への進学を第一として考えているが、留学が失敗で退学帰国の不安がない安全策を取りたいとも思う。国内の大学に入学して交換留学などの方法で、とも考えているが…」という場合は、海外への直接進学は考えず、進学した国内の大学の留学制度を調べることを勧めます。
国内の多くの大学が留学プログラムを有しています。大学に在学中での留学は「期間留学」ですが様々な種類があります。留学先での学習が履修単位として読み替えられるものから異文化生活の体験プログラムに英語研修がついた程度のものまで様々ありますので、留学先で授業に出席はしたが英語がわからず「留学気分」だけが残った、・・・ということもありえます。時期によっては就職活動との兼ね合いで大きな決断を必要とすることもあります。ですから期間的な留学で得られるメリットについてはしっかりと調べておくべきでしょう。留学先での非日常での体験はとても大きな経験になります。しかし、せっかくの機会ですから、留学で費やす時間と費用に見合う内実と成果のある留学にしたい。「○○対効果」の観点も大事です。

◆迷い、悩みを合理的に解決する方法もあります
本校(関東学院六浦)には、関東学院大学、ハワイ州立大学機構のカピオラニ・コミュニティー・カレッジ(KCC)、そして本校との三者がそれぞれの二者間で結ぶ提携があります。その提携で、本校卒業後、KCCへの進学とKCCからの関東学院大学への編入が可能です。
このルートの場合、KCCへの進学の際はKCCのハワイ大学への編入進学(Transfer)コース枠での入学が前提条件です。入学条件が厳しそうに聞こえますが、英語については英検2級以上が最低限となっているところが特徴です。ただし、英語のレベルに応じて、大学での勉学に必要な英語の習得をKCCで併修することになります。もちろん、入学する際の英語力は高いことに越したことはなく、高いほどKCCでの学びでのアドバンテージになります。
2年間でKCCの修了証を得て、ハワイ大学(または米国本土の4年制大学)への編入が可能な状態(英語力は当然のことで、履修科目の取得成績の条件があります)で、関東学院大学3年次への編入が可能となります。その際のメリットは、関東学院大学への入学金の免除です。ただし、関東学院大学では国家試験を目指す学科へは編入できません。関東学院大学を卒業する(学期の違いで半年卒業が遅れます)とKCCの修了と関東学院大学での学士修了となります。
いまは、帰国して関東学院大学への編入となっていますが、時代と社会の流れでこれからは、日本国内の編入受入れ大学が増えることも予想できます。
具体的には、『校長のつぶやき(54)「~ハワイ大学への進学、おめでとう!~」(掲載日:2021.06.02)』『校長のつぶやき(85)「ハワイ大学KCCの説明会を開催しました」(掲載日:2023.10.21)』を参照してください。

以上を、一応の回答とさせていただきます。

10/12のオープンキャンパスでは教育内容の説明プログラムが無く、来校初めてのご家庭向けとして30分程度の校長講演を行いました。終了後中庭で、参加された保護者の方から講演の内容に関して、いまご自身が経験されていることから賛同のご意見をいただきました。ありがとうございました。同時にご質問をいただきました。回答を『校長のつぶやき』でさせていただくと申し上げておりました。世界がますます国際化で動いていく中で、日本は人口が縮小し国内のグローバル化が進みます。国内外でたくましく生きる力が必要になるでしょう。大学選びはなぜ国内だけ?と疑問を抱く方も増えてきています。六浦中・高は未来を想定し、生徒の進路の可能性を国内外で考えたいと思っています。