校長のつぶやき(104)2025年 新年のご挨拶
掲載日:2025.01.01
新年のご挨拶を申し上げます。
2024年も世界は、人類存亡の危機も感じさせる厚顔無恥の独裁的リーダーたちの横柄さに振り回されました。創造主を恐れない利己心の塊に世界中が苦しみ続けています。しかし、聖書に示されている神の経綸の通り、独裁者は神によっていかなる手段を以ってしても討たれることを中東の一国に見ました。主である神を思い、善を行ってゆく理(ことわり)を感じたクリスマスと年末でした。翻(ひるがえ)って、学校における学びの主題はどこにあるのか。何を照準にして学ぶのか。校訓「人になれ 奉仕せよ」を掲げ、2025年に向けてあらためて学びの覚悟を感じます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
◆2024年、日本の社会を眺めると大きな変化の始まりを感じました。昨年の学校説明会では拙論として、「2024年問題」とは働き方改革法による輸送業従事者の時間外労働の上限の制限で起こる諸問題の総称ではなく、即戦力の人材確保が狙いでの入国管理法の相次ぐ改正や留学生の増による日本の労働市場の大きな変化の始まりの諸相であると述べました。そのために学びの視野を拡げる必要を訴えました。
また、2024年はこれまで以上に気候の変動を感じた年でした。夏日が長く続いた一年。猛烈な暑さで諸活動にも制限を受けました。春も秋も短くなり、四季から二季へという言葉も真実味を帯びてきたと感じた一年だったと感じます。
◆2024年は、日本が固有の大きな問題を二つ、社会的、地球環境的に抱えていることがさらに明確になった一年だったと振り返ります。
一つは人口問題です。2024年の出生数が70万人を割ると早くに予測されました。現在の中学1年生の人口の65%を割り混むことが確実の情勢です。ざっくりと考えても少子化の進行では、人口減少問題の実相として、社会の営み自体の捉え直しの必要と、生き方・働き方の見直しが重要です。中高生にとっては、教育のプロセスの中でそれらの臨場的捉え方と進路開拓が課題となります。
もう一つは地球温暖化での日本の突出した現象でしょう。平均気温の上昇と気象の変化が注目されました。気温は100年あたりの上昇は、世界平均の0.7℃を上回って1.3℃の割合での上昇。最高気温35℃の猛暑日や最低気温が25℃以上の熱帯夜の日数が増加傾向(環境省データ)でした。降雨の変化では線状降雨、集中豪雨の危険が話題になりました。伴う自然災害の大規模化の危機とコミュニティーの崩壊を誰もが感じました。囁かれ始めた半世紀後の亜熱帯化という予想をどう受け止めるか。私たちは台風の襲来にはせっせと具体的に備える。それと同様に備えが必要なはずですが、問題が国レベルで大き過ぎ、動きが取れずここ首都圏では誰もがあまり気に留めないようにしているかのようです。
◆さて、経済の長期にわたる低迷と国力の衰退を、やっと教育の問題と同一面上で絡めて重大視するようになった昨今です。しかし、その自覚と同様に教育現場で必要な重大な観点は、これから先、長期にわたって対応が必要な(前述のような)大きな変化の到来への対応策では、従来以上に子どもたちに未来への力を備えることが重要ですから、過去に倣って歩く過去の進路方程式を観ていてはだめだということです。
大事なのは政治です。未来を見据えた大局的な見地での政治が求められます。しかし、政府の政策は、短期的には歴史的にベネチア化をトレースするだけに感じます。国全体の収入増は大事ですが、『文明が衰亡する時』(新潮選書2012年、故・高坂正堯氏著<元京都大学法学部教授、国際政治学者、社会科学者>)が預言の書であるかのような政策が闊歩するのはどうなのかと懸念します。
大きなことはともかく学校現場として足もとを観てできることは、10、20年後の未来社会で活躍する中高生の持つべき力をどのようにつけるかです。これまでの価値観で教育のタイムライン、ルートを考えるのは如何なものかと思います。
◆貿易立国と呼ばれなくなり投資や金融での活動が大きくなった日本です。日本の文化への注目やその輸出が伸びています。そうであればなおのこと、2024年を経て日本の経済活動でますます必要度が増す国内外で活躍できる力を付ける教育、国際化への対応での進学ルートを考えることが大事です。中高で英語力と主体的学習力をしっかりつけて、高等教育の期間を積極的に海外に求める。国内を含め多文化多様性を地で行く国際的な環境の大学に求めても良いはずです。
また、世界が直面している様々な地球環境保護対策で必要な技術革新での大きな潜在力を少なからず持つ日本。理工的思考を育て、科学技術力の開発と普及(拡販)の活動への参画を可能にする進学ルートを真摯に模索するべきでしょう。これに関しては例えば女子です。高等教育機関での「工学女子」学生の割合がOECD諸国で最下位の現実。大きくは家庭と中高学校現場の教育姿勢にあります。女子の生き方の捉え方に、刷り込まれた前近代的な考え方による捕縛がまだ強い現実です。
両極に偏ったメッセージに終わりますが、これからの日本を考えるとき、従来以上に国内の国際化対応と理工系での立身を考える進学ルートの模索が2025年以降の大きなポイントとなるでしょう。
関東学院六浦中学校・高等学校はまだまだ教育フレームの改革の途上にありますが、10年後、20年後の社会の変化と進路のタイムラインでの考え方、そのパラダイム・シフトが大事である・・・といっそう強く思うところです。
2025年1月1日
関東学院六浦中学校・高等学校
校長 黒畑 勝男