受験生の皆さんへ/to Student

2017年度入学式における校長挨拶

2017年4月5日(水)に行われた、関東学院六浦中学校・高等学校の入学式における校長挨拶の全文です。

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麗らかな春の陽射しに恵まれた今日、ここに集う新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

皆さんは、様々な思いを胸に今日を迎えていることを、教職員全員がよく知っています。しかし同時に、それぞれの思いをはるかに越えて、今日ここにいるのは神様の意思であること、一人一人が導かれてここにいる、ということを確信しています。

関東学院六浦で、未来の自分を準備する大切な時を過ごすのは、神様からの贈り物です。「未来に生きるための力をしっかりと育てる」ために、一人一人の道が関東学院六浦に準備されたのです。

未来に生きるための力をしっかりと育てる、と言いました。では、「育てる」とは誰が育てるのか、このことを考えてみましょう。

皆さんは、幼ければ幼い時ほど、成長は人の手に頼っていたということを、深く、自分のこととして考えたことがありますか。その典型は赤ん坊ですね。大きな特徴の一つは、赤ん坊は自分でご飯を食べられないことです。人によってご飯が与えられ、育てられてきたのです。赤ん坊は、「今日の夕食には、お肉が食べたい」と言って選択することができたでしょうか。周囲の大人の力に頼り、自分で選ぶことはないのが当たり前でした。

ところが、人生には自分が選び取って行かなければならないことでいっぱいです。むしろ、いたるところに、あらゆることに選択があります。選び取ることに意味があるのが人生だと言っても言い過ぎではありません。しかし、皆さんのこれまでの人生では、自分で選択することはほとんど無かったと思います。

例えば、幼いころに水泳を始めます。あるいは、ピアノを始めます。始めるきっかけは何だったのでしょうか。多くのことで、そのきっかけや動機、やる気に至るまで、周囲の自分以外の大人たちの選択と判断、誘導がありました。場がセットされ、導き出されたことが多かったはずです。自分で選択することが無かったことは、学校の教育でも同じことが言え、学ぶ内容の大部分がそうでした。与えられたもので学んできました。

しかし、今日からは違います。関東学院六浦への入学を機に大きく変わります。好きなことを探し、希望とするものを求め、あるいは、伸ばそうとする力をさらに伸ばすための環境が用意されている関東六浦への入学です。自分で好きなものは何かを決めて「選ぶ」、自分で希望するものを探して「選ぶ」、あるいは、伸ばしたい力を「選んで」さらに伸ばす。そうして自分の生き方を決めてゆく。生き方を決めてゆくのは、選択をしてゆくこととも言えます。今日はその始まりなのです。

皆に共通する基本の学習をその基礎として、それらに加えて、自分なりのものを選んで加えてゆく。選ぶものは他者とは違っていいのです。違っていて当然と理解し、自分に合うもの選び、むしろ違うことでの自信を深めながら、自分らしさへの「選択」として加えてゆく。つまり、誰もがするコンパルソリーだけではなく、自分のオプションを選択して、生きる力を身に付けて行く。それが将来への力へとなっていくのです。これが今日からの生活の意味となります。このことを覚え決意してほしい。このことを皆さん一人一人に、贈る言葉としたいと思います。

さて、ICTとAIという言葉を聞いたことがありますね。

ICT、情報伝達とコミュニケーションの技術は、過去20年ほどの間で著しいく成長し、世界中が個人レベルから世界のあらゆる情報に繋がることができるようになりました。

そしてAI、人口知能とそれを実際に動きに連動させるロボットなどの技術は、以前には無かった速さと規模で急激に発達しています。皆さんが大学を卒業する頃には、それらの技術の発達によって、社会の環境がますます大きく変化しているでしょう。多くの分野で、働き方や仕事し方そのものが変化すると言われています。無くなってしまう仕事も多く出ると言われています。また新しい仕事や働き方が生まれてくると言われています。

例としてスマート・フォンを考えてみます。スマート・フォン自体は10年ほどの歴史です。しかし、急速に世界各地へ普及しています。また、スマート・フォンを活用した急激な技術の成長もこれまで見なかった速さでしょう。スマート・フォンで何でもできるような社会になってきたということは、皆さんも子どもの頃からの生活の中の変化で実際に感じているはずです。

つまり、電話が電話でなくなったわけです。電話が有線で、電話が電話だけの機能であった頃に、今の社会の変化を誰が想像できたでしょうか。電話が、画像や音楽も当然として様々な情報を送信し交換する手段となり、また、人工知能を応用する機器への指示を送る手段となるなどと想像した人は、どれだけいたでしょうか。

「鉄腕アトム」という漫画をしっていますか? 手塚治虫の作ですが、1950年代から1960年代にかけて漫画雑誌やテレビ・アニメとして、一世を風靡した漫画です。原子力をエネルギー源として、空を飛べて宇宙にも行ける10万馬力の力を持つ少年人型ロボットです。人と同じような心と感情を持つアトム少年の漫画です。当時から想像する21世紀は、SFの舞台となっていました。しかし、そんなSF漫画でもそこに登場する電話機は、当時普及しはじめたダイヤルを回す黒電話でした。

申し上げたいのは、時代の変化、社会の変化は、なかなか想像しにくいということです。社会の変化が想像しにくいということです。しかし、社会は必ず変化することを、これからの学びの中では忘れてはならない。変わるということは、とても重要な観点であり、強く持たなくてはならない意識であるということです。

さて、その「電話機」ですが、電話機は、今から142年前の1875年に発明されました。電話を最初に発明したのは、アレキサンダー・グラハム・ベルです。

このベルの残した言葉に感動し研究する心に火がついた日本人がいます。日本で4番目のノーベル賞の受賞者の江崎玲於奈博士です。江崎さんは自叙伝的著作の中で述べています。ベルの功績を記念したベル研究所の入り口にある胸像の台座に刻まれた言葉だったと回想しています。

Leave the beaten track occasionally
 and dive into the woods,
 you will be certain to find something
 that you have never seen before.

時には、踏み固められた道を離れて、
森の中に深く入ってみなさい。
そこでは、きっと何か新しいものをきっと見出すでしょう。
それは、あなたがこれまで目にしたことのないものです。

江崎さんは、この言葉に触発され、エサキダイオードの発明をし、1973年にノーベル物理学賞を受賞しました。

江崎玲於奈博士は、持論として「知的能力」を二つの力に分けて説いています。分別する力、「分別力」と、創造する力、つくりだす力の「創造力」です。

分別力とは、従来の受け身の学び中心の中でつけてゆく、「まねる」、「聴く」、「読む」、「覚える」ことが基本となって身についてゆく力で、社会の中で生きてゆくのに必要な適切な判断力、義務感、責任感、物事の道理を理解する力としての「分別力」と述べられています。

「創造力」とは無い状態から創りだす力、生み出す力ということですが、江崎さんは、「創造力」とは得た知識を基の力にし、「疑う力」、「考える力」、「探求する力」、「実行する力」として活かし、自分の中に持っている潜在的な力を引き出す「知的能力」であると語っています。

そして、分別する力は、年齢とともに増していき、逆に創造する力は、年齢とともに衰えてゆくと言います。着目しなければならないのが、その創造力と若さの関係です。個人の力、個性が求められる社会には、この創造力の育成が大切だと力説します。そして創造力は、自分で付けてゆくこと、いわば、自分で育てることが大切だということを指摘し、日本の教育に求めたい観点だと述べています。学問分野での優れた研究だけを指して言うのではなく、自分の将来の未来、未知へ挑戦する力を育てる事の大切さを説いていると考えます。

今、変化する国際社会は、グローバル化、ボーダーレス化の社会です。国内でも人材の登用でグローバル化が進んでいることを日々感じます。皆さんが社会に出る時に備え、そして、社会の様々な分野で中心となって活躍する時に備えるためには、大きく変化する社会に対応する力の種を、この中学と高校の時代に持たなければなりません。

冒頭で、これまで皆さんは自ら選ぶオプションが殆どない中で、育てられてきたと述べました。しかし、今日からは違います。勇気をもって、自分で好きなものは何かを決めて選び、自分で希望するものを探して選び、伸ばそうとする力を選んでさらに伸ばし、自分の生き方を決めてゆきます。受け身の学びでつけてきた力だけを頼みにして、どんどん過去になってゆく「今」の考え方に縛られるようなことにはなってはいけません。ますますグローバル化が進み、多様性が当たり前となり身近となる近未来の社会の中で必要な力を、この関東六浦で伸ばしていきましょう。

ただし、その力を自ら育ててゆく上では、何のためにその力を付けるのか、そのことを心の底に、つねに自問してゆかねばなりません。関東学院六浦ではそれを毎日考えていきます。関東学院は「人になれ 奉仕せよ」を校訓と掲げていますが、その土台はキリストの教えです。

神に愛されていることを知り、それだからこそ、互いに愛し合うことが大切なのだということを同時に学んでゆかなければ、身に付けていく力は、結局は利己的な満足のためのものにとどまります。「全ては自分の利益のために」という暴力にしかなりません。

今日示された聖書の言葉を見つめつつ、自ら選ぶオプションの中に、真に「生きる力」を付けて行ってほしい、自分を育てていってほしいと願います。

最後になりましたが、保護者の皆様、お子様のご入学にあたり、教職員一同、心からのお慶びとお祝いを申し上げます。

また同時に、学校を代表しましてお願いを申し上げます。

申し上げるまでもなく、社会がこれまで経験しなかった速度と規模で変っていきます。保護主義に構えを変え始める国際社会の向きもありますが、どうあれグローバル化は、あらゆる面で想像もつかない規模で進行します。そうした時代に対応できる教育の一歩は、ご家庭での「社会のながめ方と価値観」の中にあると申し上げたいと思います。

「かわいい子には旅をさせろ」と言いますが、旅とは、広く経験するということに他なりません。そして経験とは少なからず苦労を伴うことですが、しっかりとした基礎の力と同時にさせたいものです。大きな学習動機にもなり、将来への財産となるからです。

身も心も大きく変わる中高時代です。人生の中で最も著しく成長する時期です。未知、未来との衝突を受け止める確かな力の成長とさせたいと思います。しかし、それには、ご家庭も学校も、「育てる」から「育つを助ける」姿勢へとスタンスを変える勇気が必要です。ともに力を合せていきたいとお願いする所存です。

さて、生徒の皆さん、新しい環境の関東学院六浦中学校・高等学校で学ぶことの意味をあらためて考え、自信と勇気、夢をもって、着実に、堅実に、学校生活を始めてほしいと願います。

あらためて、おめでとうございます。

これをもって、式辞とします。

2017年4月5日
関東学院六浦中学校・高等学校
校長 黒畑 勝男