校長のつぶやき(72)未来への力…生物部の紹介
掲載日:2022.09.26
その1) 「ボラはなぜ跳ねるのか」
生物部が三年前に始めた研究テーマです。「2021年度マリンチャレンジプログラム」*1の関東大会で優秀賞を受賞し、2022年3月、全国大会で発表しました。後輩たちがその研究を引き継いでいます。先日の9月17日(土)、横浜薬科大学主催の「ハマヤクサイエンス研究会第1回学術発表会~自然科学への探究~」(ポスターセッションによる発表会)に参加しました。16組(個人またはチーム)の参加。最優秀賞1組、優秀賞5組、奨励賞10組。本校生物部チームは最優秀賞をいただきました。内容は10月7日TVKの夕方のニュースで放送予定です。
*1マリンチャレンジプログラム:日本財団の「海と日本PROJECT」の中のコンテストです。
その2) 「海洋研究 3Dスーパーサイエンスプロジェクト」
生物部中学3年生のR.K君は、「海洋研究 3Dスーパーサイエンスプロジェクト」の第二期生に選ばれました。すばらしい! 全国から応募の70人の中から選ばれたのは9人。R.K君は3Dプリンターが無償で与えられ、専用のコンピュータが貸し出されています。テーマは、まだわからないことが多いカサゴの生態です。2023年3月に行われる研究発表を目指しています。夏休みには2泊3日の研修に参加しました。R.K君の3D作品のいくつかは10月末の六浦祭で展示される予定です。
このプロジェクトは、日本財団の「海と日本プロジェクト」の一つで、主催は「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト実行委員会」です。ところで、何で?何のための3D??
日本はその優秀な科学技術力に反して、教育のICT環境はOECD諸国の中でも最下位の層に位置しています。3Dの教育にいたっては全くの後進国です。3D技術者は圧倒的に不足しており、海洋研究の分野でも常に不足しているそうです。3D技術を駆使することで解決できる問題が多くある・・・3Dへの関心を呼び起こす・・・で、「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」なのだそうです。
ICT教育の環境では先駆を行く関東学院「六浦」でも、3Dを活用する教育、生徒が日常的に3Dを学ぶ機会はありません。残念ですが3Dは未だです。しかし開き直りではありませんが、六浦中・高は考えています。学校での教育は100年前とは違い、社会に出る準備としては万能ではない。学校で強調する価値観や考え方も、その全てが世の中に通じるものでもない。一方、社会が発展するにつれ、学校の学びは社会で必要なこととの乖離が大きくなる…。
したがって、生徒が興味を持ったら、そして、その興味の探究に学校が応えられないとしたら、生徒は外で学ぶ。否、学校の学びの多くを外に繋いで学ぶべきなのです。学校は、探究するために必要な基礎的な学びをしっかりと行います。それは従来と同様です。しかし六浦は、学びで得る知識の「量」や訓練の「成果」だけを評価することが教育だ、成績だとは考えてはいません。
知識や知恵は実際に活かしてこそ価値があります。知識が単に知っていることにとどまっていれば、すなわち、得た知識が実践に活かされなければ死んだ知識になってしまいます。日本の教育は長い間、知識の習得に重点をおいてきました。しかし、いまは変わってきています。地球環境に関する課題が大きくなり、また「第4次産業革命」と呼ばれる時代になり、求められる力は、未知のことを考えてゆく力や協働して課題を解決してゆく力となりました。そして学びとは、そのために行動する力の習得で、単なる知識の習得ではありません。
生物部の活動はその学びのあり方の一つの例です。未来への力…第一には探究したいと思う気持ちが起きること。第二には探究活動を支える地道な・・・学問レベルでは・・・極々基礎的ですが…教科の学習をしっかりすることです。何よりも、探究したい、考えてみたいという好奇心を持つことが大事で、好奇心をくすぐる環境が周囲にあることも大事なところです。
最後にもう一つ、
その3) 足跡を残す
生物部は2020年2月の「新江ノ島水族館水槽コンテスト」で優勝しました。その記念プレートは現在も水族館に飾られてあります。生徒たちの努力が顕彰されるのは嬉しいことです。しかし、表彰されることが目標ではありません。表彰は結果の一つの形です。むしろ、何かを自ら積み上げてきたという自分の「足跡」を自分に残すことが大事です。
今回の「ハマヤクサイエンス研究会第1回学術発表会~自然科学への探究~」には、本校の高校2年生女子2名、M.KさんとK.Yさんもそれぞれ個人で参加しました。M.Kさんは「若者がオーバードーズをしてしまう背景には何があるかに関する研究」、K.Yさんは「香りの強さと睡眠の質に関する研究」です。2人の発表にも大学の先生をはじめ多くの人が集まっていました。
「集え!未来の研究者」と印字された発表会のプログラムには、A4で1枚のレジュメ(目的、方法、結果、考察)が載っています。高校2年生!ポイントが明確でとてもよくまとまっていました。これも足跡。足跡は「未来への力」の確かな一歩です。