校長のつぶやき(77)六浦中・高…学校改革10年目
掲載日:2023.05.22
関東学院六浦中学校・高等学校は、2013年の創立60周年を機に、2014年度から新しい時代を見据えた教育改革を行ってきました。この9年間を振り返ってみます。
◆2015年
★全教室 ICT環境の整備と併せて電子黒板を設置。学校内外エリア95%をカバーするLAN環境で、屋外の授業や授業以外の活動でも活用できる環境にしました。
★中学の総合的な学習の時間を「地球市民講座」として特化。図書館との協働で探究型の学びとして学年進行でテーマを深化させました。
★英語授業に CLIL(学習内容と習得目標言語の統合型学習方式)を導入。CLILは横浜で先駆的な取り組みでした。Non-Japanese の英語教員のGET(Global English Teachers現在8人6カ国の常勤教員)は英語教育が専門で世界から着任。テキストは文科省指定教科書以外に『TIME ZONES』(National Geographic 系列の教科書会社のテキスト)を採用しました。有名な語学学校でも採用しています。
◆2016年
★ハワイ州立大学機構カピオラニ・コミュニティ・カレッジ(KCC)との教育提携(REACH program)を締結。KCC修了後、ハワイ大学または関東学院大学3年次に編入できる進学ルートができました。
◆2017年
★「選択制グローバル研修」の開始。学年が全員で参加する「修学旅行」を廃止してテーマ別・学年縦断型の選択制の研修旅行に転換しました。学校の提供する研修プログラムから、学校企画でエージェント催行での海外語学研修や留学も含む必修の研修制度です。学校外の団体が主催する研修・体験プログラムなどへの参加も研修として認定することもあります。
必ずしも団体やグループである必要はなく、自分の興味関心で取り組む、国内外に展開する選択型の研修で、主体的学びと態度の育成、新たな「気づき」による自己啓発力の引き出しを目的としています。事前事後学習が徹底され、年度末の学習報告会で各コースがまとめのプレゼンを行います。全国的にもまだ珍しい実施形態ですが、たいへん合理的で実効的です。
◆2018年
★各生徒がChromebookを個人所有で所持。Google の専有アカウントで、6年間の学びの記録が継続してできます。同時にe-learningを導入。個人所有での端末の所持により、文科省の唱える「GIGAスクール構想」と「学びの個別最適化」を先取り的に展開しました。
★中学2・3年に教科横断的に「文章力向上講座(現在は「言語力活用講座」)」を設置。基本的な言語運用力を日本語4技能の熟達で育成することを目指しています。
★「探究型学習」を高1で開始。中学で設置した「地球市民講座」での学び方を土台にした学びです。
★中3を対象にPre-GLEプログラムを展開。翌年2019年からスタートする高校段階からのGLE(Global Learning through English)のパイロット的実践として18年度の1年間のみでの開講でした。
★海外大学への進学準備特別講座の開講。ISA社との提携でUC.DAVIS(カリフォルニア州立大学デイヴィス校)の専任講師派遣による講座。19年度までの2年間でしたが20年度からはIELTS 特別土曜講座として継続されました。
★選択制グローバル研修の拡大。台湾、マレーシアにも拡大、フィリピン・マニラ・オルティガス語学研修を展開。日本の将来を見据えアジアでのプログラムを増やしています。
★マレーシア・REAL教育学園中等学校との教育活動提携の締結。本校からのアウトバウンド留学プログラムを開始しました。
◆2019年
★Google Classroom の通常授業での効果的活用の開始。
★GLE・SELF(Success& Empowerment through the Lingua Franca)プログラムの開始。外部教育機関+民間企業との連携教育プログラムとして、実社会・企業と連携するPBL型学習を開始しました。
★ベトナム国家外国語・国際関係大学附属外国語特別高等学校との教育連携の締結。
★国際生(本校に編入し卒業を目指す生徒)の受入れ開始(初年度はベトナムから4名)。
◆2020年
★コロナ禍による学校閉鎖期間中のon-line授業への切り替え。Google Classroomの積極的活用による双方向型授業で実施。朝のホームルームから体育や芸術の授業まで創意工夫で展開しました。これによってICTの活用が様々な方法へと進化しました。
★IELTS 特別土曜講座設置。2021年度までの2年間の実施で、2022年度からは高校GLEコースのカリキュラム内での実施となりました。
★英語テキスト『Time Zones』の制作協力校として認定。本校のCLILでのテキストの活用からテキスト内容への意見や改善案を寄せてきています。
★早朝+放課後自学環境「Grace Room」開設。Z会系列 でアウトソーシングとして展開しています。指名講座であったり、自由選択講座であったりと、ここにも学習における個別最適化を導入しています。
◆2021年
★海外の学校との on-line 交流の積極的展開の開始(21年はマレーシア、パレスチナ)。
★定員180名の学校寮設置。個室、休日以外の2食付きで、大浴場の他に各フロアーに24時間利用できるシャワーブースもあります。もちろん館内無線LAN環境です。
★選択制グローバル研修に外部のon-lineプログラムも導入。
◆2022年
★アメリカPCD高校の卒業認定を目指す「U.S. Dual Diploma Program」の開始。本校は同プログラムの日本国内の総代理JAACの協定校として加盟。アメリカ高校卒業認定資格が本校卒業と同時に取得できます。2022年度は8名、2023年度は現在6名が参加しています。
アメリカと繋いで行われる2年間のon-line学習で、費用面では1年間の海外留学費用よりも低く、アメリカの高校での学び方でリベラル・アーツ的な教科教材を通して、大学進学レベルの英語と必要とされるアカデミック・スキルを身に付けます。修了後は、アメリカの大学の学部へ直接進学ができる力が担保されます。志望する大学によっては奨学金給付も可能なプログラムです。
◆2023年
★関東学院大学との教育提携の増進。高大連携科目が始まりました。高校1~3年生(内部進学生・高校入学生)が対象で、関東学院大学との同一キャンパスのアドバンテージを活かした『データサイエンス概論』(前期)と『データサイエンス演習』(後期)が受講(講座受講料有)できます。関東学院大学に進学した場合、修得した単位が入学前修得として認定されます。
◆◆届けたいメッセージ◆◆
★六浦中・高はこの9年間、「近未来を想像し、10、20年後に動くことができる力を付けること」の重要性を説き続けてきました。その理由は、何よりも人口減少と社会の変化への着目です。そして、その重要さが2022年の1年間の日本国内の出生者数から明らかになったように思います。出生数は80万人を割り込みました。今、22歳は約118万人。22年後の22歳は今の3分の2になります。2017年の厚生労働省の人口動態推計値から生産年齢人口の減少が10年ほど前倒しになります。総人口では5年後から毎年100万人単位で減るという推計はすでにあります。中高生はその時に何歳で、社会の新しい局面にチャレンジできる力はどんな力だと考えるでしょうか。今できることは? 今すべき選択は?
★日本の社会は、国力の維持でも徐々に厳しい局面に向かっています。政府はいよいよ真剣に少子化の対策に乗り出しましたが、中高生がこの先20年間の激動の中を生きていくことには変わりありません。自分で先見的に備える必要があります。日本が生き延びるために、そして自分が日本で生き延びるために、ますます進む国内外でのグローバル化の進行とAIとロボットの浸透の中で「生きる力」を付けることが大事です。
★天気予報で台風と聞けば人は備えをします。しかし、人口減少と聞いて教育で何かを備えようとしているでしょうか。未来の社会観が大事なのに、将来を眺めるにも視野が広がらず、今までとあまり変わりない勉強観での学習、そして進学観。進路の選択を遠くに焦点を合わせてみることが必要です。この2、3年の入学生を見ていると、そういう観点や動機から本校を考えたという家庭が増えてきました。
★六浦中・高の教育改革は、予測も難しい社会の変動を見つめてのグローバル化への教育です。中高の早い時期から進路としてもグローバル化への対応を求めてゆくことのできる教育の諸展開を、従来の大学進学観を包括してパッケージとしてきています。六浦キャンパスでは、新しい六浦中・高の10年目、2023年度を開始しました。