校長のつぶやき(98)自己効力感(self-efficacy)を育てる
掲載日:2024.06.06
◆関東学院六浦は「自己効力感」を伸ばす機会と場が多いと思います。この「自己効力感」は「自己肯定感」と混同されることがありますが、自己肯定感とは、そもそも自分には価値がある、自分は価値のある存在なのだと無条件に自分の存在を肯定する心の状態で、健全な日常生活を送るためにとても重要な自己認識です。
◆一方、自己効力感とはself-efficacyの訳語で「自己可能感」とも呼ばれる自己認知の力を指します。何かをしようとするときに、自分はそれができる、達成できるだろうと自分を信じる心の状態やその強さの程度を表す言葉です。やってみようとすることや目標に対して肯定的(積極的・ポジティブ)に臨む心の状態を指すので自己肯定感と同一と思われることもありますが、自己効力感(自己可能感)は動的で、いわば日常でもよく使われる「チャレンジ精神」の大小の状態を指しています。
◆心の育ちには年齢期とその期での経験が深く関係します。自己効力感は3つに分類され、幼少期に大きく成長するものと成長が続くものとがあり、自己効力感を高める方法が色々と提唱されています。関東学院六浦中・高は一つの方法として「選択制グローバル研修」を実施しています。国内外に研修プログラム(およそ20コース、ほとんどが中学から高校までの学年横断型での実施)を用意しています。自分が参加してみたい、自分で見てみたい、自分も行きたい…という、自分で選ぶ活動の機会を提供します。成功体験や達成感を自らが直接経験する、ロールモデルに触れて疑似的に可能感を経験することが重要と考えています。
◆自己効力感・可能感を高める有効な手立てに海外生活経験があります。非日常的経験で自分を客観的に再認識する、そして、自ら行動する必要に迫られて可能感を成長させていきます。関東学院六浦中・高は海外留学を奨励しています。留学から帰って来たクラスメートによる刺激も疑似的な体験になることが多く、相乗的に留学希望者も増えています。海外からの留学生との触れ合いの機会も増やしています。本校に留学する生徒は留学実践中のロールモデルです。本校生は、異文化の中で日々成長していく留学生の成長ぶりに疑似的に触れます。これはチャレンジする心・自己可能感を高めることにも繋がります。
◆2023年度の国際交流関連実績を紹介します。
【選択制グローバル研修】
2023年度の「選択制グローバル研修」から海外のみを抽出してまとめます。中学、高校合わせて全校1200名中、146名が海外研修に参加しています。
<本校のプログラムによる研修>
台湾(24:中7+高17)、マレーシア(20:中10+高10)、カンボジア・サービス・ラーニング(17:中3+高14)、ドバイ(16:中2+高14)、アラスカ(15:中1+高14)、フィリピン・マッキンリーヒル(14:中9+高5)、カナダ(12:中1+高11)
<グループまたは個人の計画による認定された「代替研修」>
ラグビー部計画ニュージーランド(14:高14)、カナダ語学他(4:高4)、タイ自主計画(3:中1、高2)、韓国自主計画(2:高2)、ルワンダ自主計画(1:高1)、台湾語学他(1:高1)、オーストラリア語学他(1:高1)、マルタ共和国語学他(1:高1)、アメリカ語学(1:高1)
【本校生の海外1年留学・短期留学】(留学は、「選択制グローバル研修」として認められます)
中学3年生から高校2年生までの600名中、62名がチャレンジしました。
<2023年度1年間の留学(アウトバウンド)>
29名(カナダ11、ニュージーランド10、オーストラリア6、デンマーク1、アメリカ1)
<2023年度 短期間(ターム・セメスター)の留学(アウトバンド)>
33名(オーストラリア15、ニュージーランド8、カナダ7、アメリカ2、デンマーク1)
【本校への高校正規入学者(本校での卒業を目指すインバウンド国際生)】
2名(中国(1)・香港(1))
【本校への期間留学生(単位修得を伴わない短期・長期のインバウンド留学生)】
6名(ポーランド(1)、フランス(1)、タイ(1)、中国(2)、ニュージーランド(1))
◆人口縮小と国内労働環境の国際化が間違いなく進む日本。高度な技術をもつ海外の人々の呼び込みに力を入れる方向で動くことにした政府。子どもたちが社会に巣立つ10年後に求められる力について考えさせられます。その力の育成のためにも、未来で何かをするにも、自己効力感は重要な力です。