校長のつぶやき(47)「ジーンと しみた言葉…1月20日」


掲載日:2021.01.25

今日は、先週の日常からジーンときた一コマを紹介します。

六浦は、1月8日に発出された緊急事態宣言の以前から、厳しい状況に応じて全学年全クラス、通常時間割で原則on-line授業への切り換えを用意してきました。実際には18日からの実施としました。とは言うものの、生徒は学力テストと模試の日には登校し、中学生はそれに加えてほぼ全員が受検する英検の日に登校しています。試験であれば比較的動きがなく発話も少ないので、試験は登校で実施としました。

登校の日です。中学1年の女の子たちが校長室の前を通りかかった時、私は校長室からその廊下に出たところでした。挨拶を交わしました。あどけない感じが残る3人です。歩みを止めてニコニコ…満面笑顔。嬉しいですよ、笑顔は。挨拶は落ち着いた明るい声で、それぞれのセリフが決まっている芝居のようでした。

「あ!校長先生!」、「こんにちは!」、「みんなを守ってくれてありがとうございます」。

私もニッコリ。…しかし、最後の「みんなを守ってくれてありがとうございます」が唐突だったので、少しビックリしました。何だろう。どういうことかなぁ。on-line授業のことかな…それとも本校からのメッセージのことかな…と、目まぐるしく頭の中でその背景を捜していました。ここで「なんのこと?」という返答は無粋すぎる。私は返す言葉に迷い逡巡していました。長く感じた一瞬です。

「アンケートかな?」…。直感で思ったことがありました。生活指導部が、生徒全員が携行するChromebookへそれぞれのGoogle Classroomに個別に課題として送信したアンケートです。そのメッセージが伝わったのだろうか?! そのことだろうか…と、悩みました。授業をon-lineへ切り換える際、各家庭へ通知メールを配信しましたが、同時に生活指導部が、1年生から5年生の生徒たちに課題のついたスライドショーを送信したのです。

学校の教育には厚さが重要です。社会で起こっていることを真剣に理解してもらい、軽はずみな言動を考えさせる趣旨で制作されたスライドショーです。感染した人の人権を守ることの大切さを伝えるプレゼンテーション。そしてそれに基づくアンケート質問が3つ。スライドは心理学的観点からの説明ですが、誰もが素直にまっすぐ理解できるわかりやすいものです。付されたアンケートは生徒全員が回答することが課題で、on-lineで返信することになっていました。

※学校内の掲示板に生徒たちからの声を掲示しました。

Google for Education のシステムは便利です。私も生徒全員の回答をon-lineのスプレッドシート上で読みました。(…2020年秋、本校はGoogle から「Google for Education 実践校」の表彰をいただきました・・・)生徒はメッセージをあらためて書き出すことで、それが自らの思いになる。最後の質問は自由記述で医療従事者への思いを書くものですが、皆、心のこもった言葉を書いていました。

さて、ニコニコしながら私の返答を待っている3人。言葉が往復する時間は心が通う時間・・・焦りました、瞬く間です。「みんなを守ってくれてありがとうございます」は一体何を指していたのか・・・。生徒たちの笑顔が示すように、学校で友達に会うというのは楽しいはず・・・、on-line授業であることを無理にも納得しようとしているのかなぁ? そうならあまりに健気だなぁ。

…やっぱり確かめたくなり、無粋にならないように「直感」のアンケートのことに賭けました。
「かかってしまった人の気持を分からなきゃね。隣人を自分のように愛する・・・」。
的を射ているかどうか不安でした。・・・が、返ってきた言葉が純粋でした。
「そうです。自分のせいじゃないのに、かわいそうです。守るんです。」

3人と私は、互いに見えなかった文脈でも空中で一致しました。当を得た!よかった、やっぱりそうだったんだ。そしてそれ以上に、ジーンと込み上げてくるものがありました。大切なことを屈託なく伝えてくれていた生徒たち。心が震えました。

「そうだね、その通りですね」。
続けて、
「みんな、学校がon-line授業でごめんなさいね」。
と言うと、
「いいえ」。「楽しいですよ」。
むむ~、デジタル・ネイティブなんだなぁ。
そして、
「校長先生も気をつけてください」。

さらにジーンとさせられてしました。と、同時に、疲れを感じていた気持ちが吹っ飛びました。私は背筋が伸びるのを感じました。

「ありがとう」。