校長のつぶやき(4)~ミニ説明会を終えて~
掲載日:2018.06.10
校長のつぶやき(4)
2018年6月9日
ミニ説明会を終えて
担当教員から、「また重い話ですか? 長いんですか? 軽い、本校を分かりやすく紹介するための『つぶやき』にするって、仰っていたじゃないですか?」
と…言われましたが、Dare I say it!
9日(土)午前10時、今年度第2回目のミニ説明会を実施しました。たくさんのご家族が来校され、会場はほぼいっぱいになりました。毎回、校長の挨拶は挨拶ではなく、長い!と言われながらも、必要な教育の背景にある、近未来の社会に備える教育のとらえ方をお話させていただいています。
①なぜ、キリスト教に立つ教育を力説するのか。
②なぜ、英語教育をがらりと変えたのか。
③なぜ、実学的研修プログラムが多く選択的に設定されているのか。
④なぜ、学校設定科目「地球市民」をおいているのか。
⑤なぜ、通常の国語の授業ではなく、日本語を「書く力を育てる」特別授業(中3週1時間)を今年から設置したのか。
今回は、⑤については説明をしませんでしたが、音を立てながら急激に変わってゆく日本の社会について、①から④に及ぶ教育への考え方としてお話をしました。「音を立てながら」とは言いましたが、日常を過ごす私たちにはその音は、今はまだほとんど無音です。しかし、2015年から学校改革を始めて3年。3年前より一般的にも具体的な教育改革の必要性は、毎日の未来を見つめるニュースに中にひしひしと実感できるようになった気がします。
受けさせたい教育は?と思う時、学校での学びの内容と成果を20世紀型の手法で数値化して考えがちで、そしてその延長での社会への自己実現を期待しがちです。しかし、これからの社会は、ますますの少子高齢化で生産労働人口が不足すること、そしていよいよAIなどの本格的な利活用が進むことを考えれば、当然、求められる人材像も変化する、と理解しなければなりません。
前者の生産労働人口の不足は、先日、第8回経済財政諮問会議(6月5日)で対策が明確にされました。示された二つの柱のうちの最初の「外国人材の受け入れ」がそれです。
後者は、昨今のニュースからの例では、3つのメガバンクや損保関連企業で進むRPAの採用の加速です。RPAのバック・オフィスへの急速的な浸透が始まってきている実態です。この普及は近々に加速します。通常のオフィスワークが「Robotic Process Automation」という複合的な事務処理業務の自動化で、どんどん24時間体制で消化されていく。少なからず人手が不要となる。……仕事の内容の変化から、求められる人材が質的に変化するということでしょう。
特に前者の少子高齢化での生産労働人口の不足の対策に関しては、6月5日の経済財政諮問会議での案の内容もさることながら、それ以前の2008年にスタートして10年になる「留学生受け入れ30万人計画」と、2016年6月の経済財政諮問会議での「外国人留学生の国内就職の促進」が注目すべき点です。ここにもっと中等教育機関は注視すべきと考え、六浦はここに集中し、生徒の未来への視野の拡大と授業実践内容での学校改革を具体的に進めてきています。
文科省発の文書にあるように、留学生30万人計画は「高度外国人材」の受け入れ促進の土台となる政策で、就職は、これまで大卒者がそのポストを競い合ってきた領域でのことです。私学の特色ある教育を受けさせ、社会への大きな足掛かりをつけようと考えるご家庭と児童(10年後は大学新卒、20年後は社会の中堅)は、このことに注意しなければなりません。
説明会で校長に与えられた時間は15分で多くを語れません!ここで語るしかないのですが、経験的にも感じることとして、1990年後半のアジア通貨危機の時の韓国のウォン暴落と社会の混乱の様子が、これからの日本社会に重なるような不気味な予感があります。当時、韓国の若者はどんなに「いい大学」を出ても就職が困難な時代に一気に陥りました。当時の韓国、高校生が卒業後は留学という白熱状態は必然のものだったのです。別の法人の学校に勤めていたころのことでした。韓国の交流先のある高校は、卒業後の進路は30%が海外への進学でした。生徒が海外留学の必然性を語ってくれましたが驚きました。もちろん今の日本は韓国の状況とは大きく違います。しかし、日本固有の問題の労働人口減少によって国内高度人材も比例して減少し、高度外国人材の受け入れに頼ることで促進が加速することは容易に想像がつきます。極論すればこの課題は単純で、就労ビザの発行が簡単になればいいだけのことです。残留を希望する留学生は多いわけですから。そのシフトへの加速に関しては文科省も2017年6月に発表していることに注目します。文科省は2020年からの大学入試改革を進めながら、一方で高度人材の確保を留学生政策でも進めることを明らかにしていることから、未来に備える教育に対する冷静な読み込みが必要なのです。
今年6月5日の経済財政諮問会議では、二つ目の提案として安倍首相がまとめて、「潜在成長率を引き上げるため、人づくり革命と生産性革命に最優先で……中略……あらゆる政策を総動員する」と語っています。耳慣れない「人づくり革命」とは?と思うわけです。会議では委員の中から「安倍政権は……中略……希望する誰もが活躍できる社会の実現に取り組んできたことである。共生社会の実現に向けて、受け入れる外国人に対しても、これを適用していくという強いメッセージを出していくべき」という意見もありました。安倍首相はまとめとして、「移民政策とは異なるものとして、新たな在留資格の創設を明記した。」と語っているところに注目するわけです。
また、政府とは切り離して企業はどのような人材を求めるのか?と考えます。これは直近のボストン・キャリア・フォーラムに参加した日本企業と日本人留学生の数を見ればそれが一目瞭然でしょう。真のトランス・カルチャー経験有りの付加価値の大きい学生が好まれるのは当然の流れと思います。
とは言え、中学校入学前は、素直で純粋な小学生です。社会の変化と未来の自分について……は、とてもとても難しい。たいていは考えるにも至らないでしょう。多くは、何点取れるのか、明日はどれだけ成績が伸びるのかで精いっぱいな状態でしょう。その純粋さと真面目さが実は、宝です。ですから六浦は、中高では周囲への「気づき」のための授業と「しかけ」が業として必要と考えます。同時に保護者の皆さんにも、どんどん変化する未来社会への「道としての教育」を考えてもらえればと思うわけです。