新年のご挨拶


掲載日:2018.01.01

明けましておめでとうございます。

2018年、六浦は今年、さらに前進します。どうぞよろしくお願いします。

5年前の2012年、ビジネス書著者で有名な神田昌典氏が未来の人材の要件について触れた著書『2022…これから10年、活躍できる人の条件』の中で、2012年からの10年間を「平成の文明開化」の期と語りました。明治の文明開化と違うのは、今回は、日本だけの開化ではなく世界レベルで起こる開化であり、「日本人が模倣できるモデルがない」開化だと述べました。2006年にトーマス・フリードマンが世界はフラット化すると唱えました。衝撃的な著書でした。それから10年、それを実感しない人はいないでしょう。90年代に東西の壁が無くなり、同時に進行したICTの発達で世界のあらゆる活動やそれに伴うインフラや制度がフラット化し、その影響は国内でのボーダーレス化を招いています。ぼんやりとそれを感じてはいるものの、生活環境がじわじわとボーダーレス化していく現実に対してはあまり実感が持てず、その対応や方策さえも十分に確立できないでいると言ってもいいでしょう。

端的な例が教育における外国語教育です。制度的な閉鎖性が問題視され、色々と改革が唱えられてきました。しかし、大きな悲鳴が上がらない現実であったということです。2020年の大学入試制度の変更は、初めての国家的危機感の現れでしょう。国や文科行政だけの責任ではありません。英語教育については、学校自体が必要な変化へ及び腰であったからとも言えるでしょう。教員を含め多くの大人が社会人としては実社会のベクトルを分かっているはずなのに、今までの学び方の感覚から、そして、日本の大学入試という呪縛から離れられなかったことが現実だからではないでしょうか。

隣国の韓国は、小学校の英語教育を義務化し、3年生で週2時間、5年生と6年生は週3時間、正規授業としてスタートさせました。1997年、20年も前のことです。韓国は1990年代後半に通貨危機に陥りました。経済の90%以上を貿易に依存する国情としては、政府も企業も国民の英語力を向上させることが喫緊の課題となったわけです。過熱する留学熱も単なる流行ではありませんでした。国の経済の成り立ちから教育を考える典型的な例でしょう。そして中国は、2001年から小学校に英語教育を導入しました。北京や上海などでは、1年生から英語授業が週4回行われています。国策としての経済の国際化の加速と人材育成が理由であるのは述べるまでもありません。また、本校が交流を進めてきているマレーシアは2011年、国家プロジェクトとして「英語教師養成プログラム」を開始しました。目的は、国内の多文化・多様性を当たり前として、物流も人の流れもますますグローバル化する中で、若い世代がバイリンガル(マレー語と英語)で生きる力を育むためです。普通の学校での改革が進んでいます。さてこの間、日本は英語教育の地平線をどこに見ていたのでしょうか。

アジア諸国の一般的に先進と言われる学校をわずかでも訪ねてみれば気付きます。それは先入観以外の何物でもありませんが、教育の水準が下にあるだろうと思っていたその国の学校です。それらがイギリス、アメリカ、旧宗主国のカリキュラムのもと、国の柔軟な教育観で制度設計や変更を重ね、グローバル化を当たり前とする社会で「普通に生活する人」の育成のシステムを整えてきています。一瞥して日本を超えていると分かります。グローバル・スタンダードのスキームがますます整っていく初等中等教育で若い世代が育っています。

本校は、遅まきながら2014年からASEAN各国の若い世代の成長を意識しました。ASEAN諸国は、0歳から14歳の総人口が1億7千万、日本の10倍です。近未来にはどういう世界が日本を囲むのか、それを考える必要があります。本校は横浜金沢八景の地で60年、キリストの教えに立ち、校訓「人になれ 奉仕せよ」の意味を生きることの本質を見つめつつ、伸び伸びとした教育を展開してきました。しかし本校は、社会の変化を考え決意しました。校訓を一層強く堅持しつつ、変化を見据えて本校のフレキシブルさを束ねます。「気づき」によるインセンティブの高揚、自己啓発力を高める教育を展開します。フラット化する社会に必要な基礎力を体得し、その実践力としての英語力の教育を重点化します。2015年に始めた新しい英語教育が4年目を迎えます。CLIL※で育った生徒たちが高校に進級します。新年を迎え、あらためて新しい教育のスキームを点検し前進させたいと思います。六浦が見つめる地平線は、10年後、20年後、子どもたちが自立して生きる世界です。

皆様のご健勝をお祈りしつつ、新年のご挨拶とさせていただきます。

あらためまして2018年、よろしくお願い申し上げます。

2018年 元旦

関東学院六浦中学校・高等学校
校長 黒畑 勝男(2014年度入職就任)

※CLILについては、こちらの記事もご覧ください。
※首都圏模試センターHPでの特集記事もご覧ください。